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いい魚といい油。そして熟成。由比缶詰所のこだわり

地元由比で長く愛され、今では全国にファンが広がる由比缶詰所。

そのおいしさの秘密を知りたくて、小さな港町由比に向かい、由比缶詰所の営業部の川島さんにお話を伺った。


"ツナの味を愉しんでもらいたい”

日本人に愛されるツナ缶を作るために



現在、由比缶詰所では大きく分けて2種類のツナ缶詰を販売している。一つは輸出産業の時代に作っていたレシピを復刻させた特撰まぐろ綿実油漬け、もう一つは特撰まぐろオリーブ油漬けだ。


「もともとオリーブ油漬けもイタリアやスペインなどのヨーロッパへの輸出向けの商品としてありました」


しかし当時の日本ではまだまだオリーブオイルを知っている人はほとんどおらず、日本向けに販売することはなかったが、平成5年頃にイタ飯ブームが訪れた。


「オリーブオイルが各家庭でも買えるようになって、パスタを作る時に普通にみんなが使うようになって。少し調べてみると、オリーブオイルというのはすごく体にいいということがわかって。これは将来的に流行るというか、オリーブオイルを使ったツナ缶というのは美味しいですし、きっと需要があるんじゃないかということで平成10年にもう一度作り始めました」


ただ、輸出向けそのままのレシピだとオリーブが強すぎて、日本人の口に合わなかったのだという。


「ツナの味を楽しんでもらいたいので、オリーブの香りは少し抑えて。でもやっぱりちょっとオリーブの香りもしないとオリーブで作っている意味がないので、その辺のバランスをちょうど取ったいいものを見つけたので今のオリーブのツナ缶を作り始めたんです」


由比缶詰所のツナは、ビン長マグロの中でも春から夏にかけて獲れる「夏ビン長マグロ」を使用している。夏ビン長マグロは脂の乗りがよく、肉質が柔らかいのが特徴。原料にも妥協せずこだわっているからこそ、ツナ本来の味を愉しんで欲しいという想いが伺える。


「いわゆるオリーブオイルの一番いい油というとエキストラバージンですが、エキストラバージンだとツナが負けてしまうというか、オリーブがやっぱり強すぎる。ツナとして美味しいように、弊社ではピュアオイルを使ってバランスが取れているように作っています」

綺麗に詰めようと思うと半分手作業が必要

それが職人芸と言いますか、一朝一夕ではなかなかできない




現在一般的に販売されているツナ缶詰には、ファンシータイプと身をほぐしたフレークタイプがある。


「世界的には塊(ファンシータイプ)の方が普通というか、オーソドックス。輸出産業の頃は塊のものしかなかったんですよ。日本でツナ缶というとフレークのものだと思われているんですけど、割と世界的にいうと日本だけかもしれないですね」


日本でフレークタイプの方がポピュラーなのには理由があった。


「国内でツナ缶を普及させるために、少しでも値段を落とそうと各社さん努力をされていました。塊のまま詰めるとなると手間がかかり、1日に作れる量が限られてしまうんです。結構大変なので加工賃もかかる。全部ほぐしてあとは詰めるだけにするとかなり楽に詰めることができるので、生産コストが下げられて製品の価格も下げることができたんです」


こうして日本での普及期にフレークにして価格を下げ拡販していった。


「当社では、オリーブは白い缶(ファンシータイプ)だけという時もありましたが、最初から両方の種類を販売していました。塊の綺麗な形のものを作ろうと思うと、どうしても端材が出てしまうのでフレークの商品もあるんです」


缶を開けたときに思わず見惚れるほど、綺麗に収まった美しいフォルム。ファンシータイプのツナ缶詰は今でも高級なイメージがあるが、そこはやはり手間をかけ、丁寧に作っているからこそ。




「見た目が綺麗なのが特徴なので、やはりファンシーは手間がかかります。全部機械でやっているわけじゃないんですよ。綺麗に詰めようと思うと半分手作業が必要な部分があって。それが職人芸と言いますか、一朝一夕ではなかなかできないので長年働いて作業をしてくださっている方にお願いしています」


由比缶詰所ならではの「熟成期間」

コストがかかりリスクが伴っても

お客様の手元に届いた時にきちんと美味しい状態であるように



由比缶詰所ではツナ缶詰に「熟成」期間を設け、熟成させたものでないと販売していない。まるでワインのようだと驚いたが、作りたてと熟成させたものではどう味が変化するのだろうか。


「作りたてを食べると、ツナに少し塩味がついている若い味がするんですけど、置けば置くほど魚の中に油が入っていって油の中に魚の旨みが溶け出していく。缶の中で一体化していくというのですかね。まあるい味になっていくんですね。半年も置くとだいぶ丸くなって一体感が出てくる。食べ比べをしたことがあるんですけど、全然違うんですよ。なので当社では最低半年は熟成させてからじゃないと販売しないとしています」


缶詰は製造の際に密封し殺菌を施しているので、未開封の状態であれば基本的に腐ることはないが、安全性とおいしさが保証できる期間として、日本缶詰協会によって賞味期限は3年と定められている。


賞味期限3年のうち、半年を熟成に使うのは販売機会が短くなりリスクが伴うが、妥協はしない。


「お客様は缶詰は保存がきくというイメージで購入してくださる。買ったものの賞味期限が1年を切っているとガッカリされてしまう。そうなると1年切ったものは通常販売できないので、販売機会は2年になります。そのうち半年を熟成に使うので販売機会は実質1年半しかない。保管しておかなければならないのでコストもかかりますし、売る方としてはかなり厳しいんですけど、それでもお客様の手元に届いた時に『きちんと美味しい状態であるように』ということで、半年熟成したものを販売するようにしています」


いい魚といい油を使用し、そして熟成させる。ユイカンのおいしさの秘密は、長年変わらないこだわりからできていた。


 

株式会社 由比缶詰所

住所:静岡県静岡市清水区由比429-1 地図

電話:054-375-2121(代)

営業時間:午前8時~午後5時

定休日:土日(詳しくはHPをご確認ください)


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